A子は、夫の不貞相手から慰藉料を取りたいと言う。
「夫は、不貞を認めているの?」と私が聞くと、A子は、「夫は否定しています。夫は、私の妄想だと言うのですが、ちゃんと相手の女性はわかっているのです。夫のゴルフ仲間のB子です」と言う。
私が、「証拠はあるの?」と聞くと、「立派にあります。これです」とA子が出したのが、ゴルフのスコアカード。夫とB子と2人分しか書いていないので、2人だけで行ったはずだ。夫に聞くと、他の2人のスコアは書いていないだけで、2人だけで行ったのではなく、4人で行ったのだと嘘をついている、と言うのだ。
「それでは、証拠としてはどうかな」と私が言うと、A子は、「まだまだあります」と言って、
1 A子が、外出先から自宅に電話したら、夫ではなく女性が出た。
2 夫が深夜携帯電話で話をしていた。その相手は、女性の声であった。
3 夫の勤務先の会社に電話したら、「今、帰られました」と言われたが、時間が経っても夫は帰宅せず、怪しいと思って、B子の携帯電話に電話したら、電源がOFFになっていた。夫と密会していたに違いない。
4 夫から強い香水の匂いがした。
5 夫は、下着をこれまでどおり私に買わせないで、自分で買うようになった。
等いろいろ挙げ連ねるが、どれも客観性に乏しいことばかり。
それだけでは、不貞を否定している相手に不貞だと決めつけて、訴を出すわけにはいかないと説明すると、A子は、「先生は、私の言うことを信用しないのですか。私には、女の勘で夫が不貞をはたらいているという確信があるのですよ。いいです、もう。他の先生に頼みますから」と帰ってしまった。
このような女性の依頼を引き受けたなら、さぞ大変だろうなと思った。
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